2019 No.27
中上級日本語学習者の物語描写における名詞修飾の使用実態 -名詞修飾の習得研究のための新たな分類基準を用いて
徐 乃馨
要旨
名詞修飾は日本語を習得する際、難しい項目の一つである。日本語母語話者が談話展開の機能を担う名詞修飾を使用しているが、学習者は使えていないとされている。如何にして習得を促進できるかを解明するために、学習者の使用実態を調査する必要がある。しかし、これまでの研究では、名詞修飾の分類基準が曖昧であり、学習者の母語の影響が不明である。そこで、本研究では、新たに分類基準を設定し、中上級学習者である中国語母語話者、韓国語母語話者のデータを対象に調査を行った。その結果、「行為主体者」、「時間差あり」タイプの名詞修飾、物語の展開ポイントでの名詞修飾の使用は中国語母語話者が有意に少ないことがわかった。なぜ中国語母語話者が談話展開機能の名詞修飾を使えないのか。それは、中国語の名詞修飾が日本語と違うからであると考えられる。また学習者は名詞修飾の代わりに、「(接続詞+)テ」、接続助詞を使用することが明らかになった。
中上級日本語学習者の物語描写における名詞修飾の使用実態 -名詞修飾の習得研究のための新たな分類基準を用いて- 徐乃馨(首都大学東京大学院生)