2005 No.13
多言語多文化共生の日本語教育実習を通してみて非母語話者教師の役割
古市由美子
要旨
本研究は、多言語多文化共生日本語教育を目指す実習を取り上げ、そこにおける非母語話者実習生の役割を明らかにすることを目的とする。具体的には、個々の非母語話者実習生が共生日本語教育実習の経験を通し、自分自身に関してどのような役割を意味づけするのかを明らかにする。そのために、非母語話者実習生20名の「語り」を質的に分析する。
分析の結果、次の2点が明らかになった。第一に、非母語話者実習生は、非母語話者参加者に対して、①認知面:対話を促す学習支援、②情意面:マイノリティとしての心理的な支援、③社会面:生活者としての社会的な活動支援ができる。一方、母語話者実習生・参加者に対しても、認知面、社会面における役割があると意味づけした。第二に、これらの役割は、非母語話者実習生の属性や経験に基づくものであり、非母語話者実習生だからこそ担える役割であることが示唆され、そのことによって、彼らが自分自身を肯定的に役割を意味づけしていることがわかった。