2023 No.31
日本語母語話者による程度強調副詞の使用実態 ─「日本語話し言葉コーパス」調査より─
日暮康晴
要旨
本研究では「日本語話し言葉コーパス」を対象に、程度副詞「とても」とその類義 語である「すごく」、「たいへん」、「ひじょうに」の音声タイプ及び年代別使用実態調査を実施した。調査には分類木分析を使用し、その結果、使用される音声タイプの傾向が語ごとに有意に異なることが明らかになった。特に、「ひじょうに」は客観的な情報が求められる状況で、「すごく」、「とても」は比較的くだけた状況での使用が多い。また、音声タイプ〔模擬講演〕内の年代別調査の結果からは、話者の年代によって使用される副詞に異なりが確認された。特に若年代は対人配慮に注目し、高年層になるにつれて講演というレジスター性に注目した語の選択を行う傾向にある。独話という共通環境でも、条件の異なりによって使用される語が異なるという観点は、学習者の個々の社会的状況に合わせた教育を目指す上で、初級段階からの教育内容の再整理の必要性を強く示唆するものである。