2024 No.32
ほめはどのようなコンテクストで現れているか ―日中の初対面会話におけるほめの出現パターン―
昂燕妮
要旨
本研究では、日本語と中国語の初対面会話をもとに、ほめがどのようなコンテクストで何をきっかけに行われているかを手がかりに、ほめの出現パターンを明らかにし、日中の言語文化による異同を分析した。まず、ほめが行われるに至るまでの会話のやりとりを質的に分析した結果、ほめの出現パターンとして、「同調型」「回復型」「価値見出し型」「説得型」「お返し型」「話者導入型」の 6 つが観察された。また、これらの各パターンの出現頻度について、日中の間に有意差は見られなかった。全体的な特徴として、日中の初対面会話におけるほめの 8 割以上は、「価値見出し型」と「同調型」であり、日中の母語話者はともに、初対面相手から得た情報を相手へのほめに結びつけて、良好な対人関係を構築しようとしている傾向にあることが窺われた。