2006 No.14
「ヘルンさん言葉」における小泉セツの調整日本語 ─書簡におけるフォリナー・ライティングならびに口述筆記記録に残るフォリナー・トーク─
金沢朱美
要旨
小泉八雲(LahadioHearn、以下、ハーン)の、日本橘での言語活動は、自称「ヘルンさん言葉」と呼んでいた、独特の、ピジン性の強い日本語の-変種で行われていた。
妻セツの、ハーンとの意思疎通ならびに薪作補助言語として使われた日本語はフオリナー・ライティング(以下、FW)ならびにフオリナー・トーク(以下、FT)であると判断されるが、第二言語習得に役立つと言語教育でいわれているFW、FTとはその質において異なる。セツのFW、FTは非文が多く助詞の顕著な脱落が見られるが、丁寧体、豊富なオノマトペを使い、単純化した文章ながら内容の詳述が可能である。illi度な深い内容の話において多量のレベルの高いFTが出現するという点でSnow (1981)の主張と一致を見る。地域的(方i二10ならびに時代的特徴も見られる。一方で、Ferguson (1977,1981)の「言語のピジン化」の起源としての性質をもち、ハーンのビジン性の強い日本語とセツのFW、FTとの相互作川によって「ヘルンさん言葉」が成立した。
「ヘルンさん言葉」における小泉セツの調整日本語 ─書簡におけるフォリナー・ライティングならびに口述筆記記録に残るフォリナー・トーク─ - 金沢朱美