2006 No.14
中国人学習者を対象としたピア・レスポンス ─ビリーフ調査から話し合いの問題点を探る─
田中信之
要旨
本稿では、中国人学習者19 名を対象にピア・レスポンス活動を実践し、話し合いの問題点を考察した。活動では、仲間の作文を読み、話し合い、それをもとに自分の作文を推敲した。全8回の活動後、インタビューによりビリーフを調査し、その結果をもとに考察した。話し合いの問題点は次の3点である。1)教師への依存度の高さ(自律性の低さ)、2)個性の差異、3)日本語能力の制限、により活動に適応できないということが明らかとなった。1)および2)から、活動の導入方法および教師の介入方法を考える必要がある。また、3)から母語利用の方法を検討していく必要がある。ただし、多くの学習者は話し合いで母語を使用していたにもかかわらず、基本的には日本語で話し合い、母語の使用は極力控えたいと考えていることも明らかとなった。この点から、日本語を話したいという動機を生かしながらも、母語利用の方法を考えていかなければならない。