2006 No.14
日系ペルー人の子供たちと言語継承

建木千佳


要旨

 日系ペルー人の出稼ぎは当初男性のみが対象で,長引く別居から離婚に至る家庭が増え,ペルーでは大きな社会問題となった。そこで,通信教育制度が作られる。しかし,日本生まれや日本滞在が長い子供たちは,母語が日本語にシフトしてしまい,なかなか日本語が上達しない親との会話に支障をきたすようになる。出稼ぎで来日した親はペルーへの帰国を希望し,その日のために子供たちにはスペイン語の継承を強く望むが,子供たちのモチベーションの低さ,困難な先生の確保,資金不足など負の要因があり,スペイン語教育の実施・継続は容易ではない。しかし,たとえ週1回のスペイン語教室でも,子供たちのスペイン語継承・ペルー人としてのアイデンティティー形成に役立っていることは,授業観察から確認できる。本稿では,この継承スペイン語教育をサポートしつつ,日本語とのバイリンガル教育を可能にする教育方法を探る。

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日系ペルー人の子供たちと言語継承 - 建木千佳

Nikkei Peru Children and Heritage Language - TATSUKI, Chika