2008 No.16
地域の日本語教室に含まれる対話の機会 ─「母語話者と非母語話者の接触場面という安全な枠組みの再考」─
福田泉
要旨
本稿では、首都圏A氏にある地域の日本語教室での参与観察を元に、参加者が「日本人/母語話者ー外国人/非母語話者の接触場面」という非個人的で非対称的な分割方法を解消していく交渉プロセスとして「対話」を提示した。教室活動中、参加者間の非対称的な役割の流動化、「私」個人の表面化、日常生活の語りの共有等の対話的過程が限定的ではあるが見い出された。一方、対話の機会を制限する機会を制限する要因も抽出された。その結果、上記のような接触場面の枠組みに安住せず、弱さを抱えた個人と個人の間で対話の作業を継続することが、教室活動に潜在する対等な関係性の回復とニーズへの応答につながると論じた。