2011 No.19
日本語テキストのオンライン読みにおける漢字表記語と片仮名表記語の処理 ─中国人日本語学習者の語彙 能力上位群と下位群の比較─

大和祐子・玉岡賀津雄


要旨

 本研究は,日本語のテキストのオンライン処理において,日本語の語彙能力がどのように影響しているかを検討したものである。語彙テスト によりグループ分けした中国人日本語学習者の上位・下位群に対して, 書字が同じである漢字表記語を多く含むテキストと母語の語彙知識の 援用が難しいと予想される片仮名表記語を多く含むテキストとの読み の迅速さを比較した。その結果,漢字表記語を多く含むテキストでは, 難易度が高い漢字表記語でも語彙能力に関係なく一定の迅速さで処理 できているのに対し,片仮名表記語を多く含むテキストにおいては,難 易度が高い語を中心に,日本語の語彙能力の影響が現れた。さらに,読 みの推移は語彙能力の低い学習者は特に特定の語で極端に処理時間が かかっており,読みの効率性が語彙の処理効率に依存していることが分 かった。このことから,オンラインのテキストの読みに母語と日本語の 書字の違いおよび語彙能力が影響していることが実証された。

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日本語テキストのオンライン読みにおける漢字表記語と片仮名表記語の処理 ─中国人日本語学習者の語彙 能力上位群と下位群の比較─ - 大和祐子、玉岡賀津雄

The On-line Processing of Kanji- and Katakana-presented Words in Japanese Texts - A Comparison of Greater and Lesser Lexical Knowledge Groups of Native Chinese Speakers Learning Japanese - YAMATO Yuko, TAMAOKA Katsuo