2012 No.20
多義語の意味学習を促進する処理水準の効果
麻生迪子・小森和子
要旨
本研究は、多義語の未知の意味である派生義を学習する場合、どのような学習法が有効であるかを検討した。処理水準仮説に基づき、多岐選択を用いた推測活動とL2で対訳を与える意味付与学習の効果を比較した。韓国人日本語学習者30名を推測活動群、意味付与学習群、統制群と3群に分け、各群に学習活動を実施した。分析の結果、推測活動群と意味付与学習群の両群に、学習効果が見られた。すなわち、推測活動、意味付与学習は多義語の未知の意味の学習に有効であることが明らかになった。しかし、推測活動群と意味付与学習群の間に、学習効果の差がみられなかった。この結果から、多義語の語義学習に2つの可能性を示す。第一に、多岐選択による推測活動では、意味の保持に繋がらない可能性がある。第二に、意味付与学習は、正しい意味が与えられることで、当該語の基本義と派生義を有機的に結び付け、意味の保持に繋がる可能性がある。