2013 No.21
中国語母語話者と韓国語母語話者の日本語テキストの読み処理における言語的類似性の影響
大和祐子・玉岡賀津雄
要旨
本研究では、中国語母語話者(以下、CNS)および韓国語母語話者(以下、KNS) の日本語テキストのオンライン読みを比較した。日本語の語彙テストと文法テストの ペアマッチサンプリングにより 20 組を比較の対象とした実験では、漢字または外来語 を多く含むテキストについて文節ごとの自己制御読みの手法を用いて、読み時間を測 定した。テキスト理解の正確さにはCNSとKNSに違いはなかったが、t 検定でCNSお よび KNS の各文節の処理速度を比較した結果、KNS は CNS より外来語を含む文節に おいて迅速に処理することがわかった。これは KNS の場合、母語の表記形態が音標表 記の言語であることから、片仮名表記の外来語でも CNS より迅速に処理できたと考え られる。一方、CNS は漢字表記される語が含まれる文節で KNS より迅速に処理できた。 このことからも、テキストの処理に対する母語の表記形態の類似性の影響があること が分かった。さらに、日本語と母語が統語的に類似している KNS はテキストで文末に くる連続した文節で CNS より迅速に処理している。以上のように、本研究は、日本語 と学習者の母語との言語的類似性がテキストの読みに強く影響していることを各文節 の処理レベルで実証した。