2014 No.22
日本語熟達度と語用論的能力に関する一考察 -タイ語を母語とする日本語学習者の不同意表明から-
ピナンソッティクン ポラニー
要旨
本研究では、発話行為の一種である不同意表明に焦点を当て、日本語熟達度の違い による影響と語用論的能力との関係を検討した。調査対象者は日本語母語話者、タイ 語母語話者、熟達度のレベルが低い群と高い群の外国語として日本語を学ぶ学習者で あった。本研究は談話完成テストを用い、決定木分析によって各グループによる不同 意表明の切り出しと終結部に現われた意味公式の出現傾向を比較した。その結果、学 習者は熟達度が高くなると目標言語である日本語の不同意表明により近くなる傾向が あることが明らかになった。しかし、学習者群間で母語からの転移による有意な違い が現われず、学習者全般に言語間の語用論的な違いに関する認識が強いことが見られ たことから、学習者の語用論的能力の発達には母語の転移以外に言語距離の認識も強 く影響を与えていることが示唆された。
日本語熟達度と語用論的能力に関する一考察 -タイ語を母語とする日本語学習者の不同意表明から- - ピナンソッティクン ポラニー