2021 No.29
日本語学校におけるキャリア支援の実態と可能性 −支援経験のある日本語教師の語りの分析−
塚田麻美(名古屋大学大学院生)
要旨
本研究の目的は、ある日本語教師のキャリア支援の困難点と可能性を探索的に明らかにすることである。ある日本語教師にインタビューを行い、その語りをカウンセリングの代表的なモデルであるロバート・カーカフのヘルピングを用いて分析した。ヘルピングは、場所や時間によって限定されず、人々の間で相互作用があるときにはいつでも起こるとされ、ヘルピーもヘルパーも人間的な成長を目指すチームのメンバーであるという視点で考えらた。そのため、日本語学校におけるキャリア支援の理想的なモデルの一つと考えられる。分析の結果、ヘルピングの困難点は、「かかわり技法」では教師と学生の関係性や理想的教育観のズレの問題、「応答技法」では言語の問題、「意識化技法」及び「手ほどき技法」では時間制限の問題であると考える。日本語教師が困難点を意識することにより、日本語学校での新たなキャリア支援の可能性が生まれることが示唆された。
日本語学校におけるキャリア支援の実態と可能性 −支援経験のある日本語教師の語りの分析− - 塚田麻美(名古屋大学大学院生)