2022 No.30
「ほめに対する応答」の日中対照分析 ─ 親疎関係に焦点をあてて ─
昂 燕妮
要旨
本稿では、日本語と中国語の初対面・友人同士の会話における「ほめに対する応答」に着目し、それが言語社会及び親疎関係にどのように影響されているかを、談話分析の手法を用いて分析した。その結果、日本語の「ほめに対する応答」は、全体的にはほめに対して肯定的な態度を示す傾向にあると同時に、控え目な側面もある。一方、中国語の「ほめに対する応答」には、ほめに積極的に同意を示し、ほめられたことをきっかけに友好的な関係と活発な会話を構築しようとする特徴が見られた。また、日本語の「ほめに対する応答」は、中国語より相手との親疎関係の影響を受ける傾向が示された。具体的には、日中ともに友人同士の会話では応答が「肯定的>回避的>否定的」の順で多く、中国語では大きな親疎の差が見られなかったのに対して、日本語では初対面会話になると「回避的>肯定的>否定的」の順になり、「回避的」な応答が最も多かった。