2025 No.33
ほめの応答に用いられる「いや」の機能および後続展開─ 日本語母語話者と中国人日本語学習者の比較 ─
彭津
要旨
本稿ではほめの応答に用いられる「いや」の機能および後続展開について、『BTSJ日本語自然会話コーパス』と『多言語母語の日本語学習者横断コーパス』を使用し、談話・相互行為レベルで日本語母語話者と中国人日本語学習者の比較分析を行った。結果、ほめの応答に出現する「いや」の機能は、ほめに対して抵抗を示したりほめと距離を置いたりすることであり、「いや」に続く発話によって応答が否定や回避、肯定、それらの複合となることが明らかになった。また、ほめに対する応答が産出されたあとの受け手主導の後続展開は、「語りの開始」「先行語りの継続」「情報要求」「情報提供」「話題転換」に分類できた。母語話者は様々な方法で後続話題を展開し、特に先行した応答と関連する「語りの開始」が多かったのに対し、学習者はほめ談話の内容と関連する「情報提供」が多かった。これらに基づき「いや」による多様な応答方略と後続展開方略の指導策を提案した。