2004 No.12
日本語学習者の意味ネットワーク構造 ─日本語母語話者との比較から─
小森和子
要旨
本稿は日本語学習者の意味ネットワーク構造を日本語母語話者との比較から,量的・質的に分析した結果の報告である。量的分析ではSchmitt(1998)の連想率得点の試案を導入し,ネットワーク構造を数値化して評価検討した。その結果,日本語習熟度の高い学習者は連想率得点が高くなる傾向が認められた。質的分析では学習者と母語話者の反応識の相違点を探索的に考察した。その結果,学習者は言語習熟度が商くなっても難易度に変化が認められず,反応語の多くが初級語彙であった。また,難物に対する評価判断を表す語の産出が多かった。一方,母語話者は日本の社会文化的知識を反映した級外語彙の産出や,メタファーを形成する連語の反応が多数認められた。