2011 No.19
自然発話における日本語テンス・アスペクトの習得研究 ―R時の認識を中心に―
崔 亜珍
要旨
本稿では、KY コーパスの発話資料に基づき、中国語・韓国語・英語 を母語とする日本語学習者のテンス・アスペクトの習得状況を R 時の認 識の観点から探ってみた。その結果、母語の異なる学習者の間に一致し た習得順序が見られた。つまり、学習者は日本語力の低い段階では、 Speech(S)時と Event(E)時の分離ができず、日本語力が上がるにつれ、 S 時と E 時の関係によって文の時間関係を捉えられるようになり、日本 語力がさらに上がると、Reference(R)時の認識ができ、S 時、E 時、R 時の3つにより物事を捉える。R 時の認識は S 時、E 時の両方と一致し ている場合から、S 時、E 時のどちらか一方と一致している場合、S 時、 E 時のどちらも一致していない場合へと広がっていくように見られる。 しかし、母語の影響によるものか、母語の異なる学習者の間で R 時の認 識が若干違ってくることも窺われた。