2025 No.33
マレー人元留学生による勧誘行動の特徴と課題─ コミュニケーション言語能力の観点から ─
稗田奈津江
要旨
本稿の目的は、マレー人元留学生(MNS)による勧誘行動をコミュニケーション言語能力の観点から総合的に分析を行い、それらの特徴と課題を明らかにすることである。本研究では、SNS のテキストチャットを用いて、勧誘のロールプレイを行った。そして、言語構造的能力、社会言語能力、語用能力の観点から、日本語母語話者(JNS)とMNSを比較した。分析の結果、MNSは接触場面において、友人とのやりとりに必要十分な社会言語能力と語用能力を身につけており、相手に適切な配慮を示しつつ、勧誘の主目的を達成できていることがわかった。一方で、言語構造的能力の面からはローカルエラーが散見されたが、それらが修正されることはなかった。これらにより、「ニーズの充足」がなされた場合、それが「訂正フィードバックの欠如」という外的要因や、「注意不足」「エラーの不検出」等の内的要因を連動的に引き起こす可能性があることが示唆された。